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「ゲーム脳の恐怖」4 ~検討無き暴走~ [ゲーム脳の恐怖]

 仮にβ/αが前記のように「デタラメなやり方」で見出された物であっても、それが偶然「痴呆症患者の挙動の側面」を指し示すものであったという可能性は残ります。
 しかし、実際にそうなのかどうかは、慎重に検討すべき問題です。


【慎重に検討すべきであった事】

A それがある特定試行における偶然の結果であるのか無いのか
 データからβ/αという指標を導出した以後に同条件で再検証しない限り、妥当性は得られません。

B その値が、脳の活動に由来するものなのか否か
 仮にβ/αが本当に識別に有効であったとしても、場合によっては、痴呆症患者に多い(脳の活動ではなく)身体活動の傾向が脳波に混入していたからという可能性も十分有ります

※ 脳の活動に由来する電位差は、体を動かす際に生じる電位差よりも微弱です。また、環境によっては蛍光灯等を由来とする電磁波が混入する場合もあります。このような脳波に混入する外部要因をアーチファクトと呼びます。

※ 計測しながらゲームをやったり果てはダンスさせたりしているわけですから、元波形にはアーチファクトが乗りまくりと思われます。一方、著者が使用している装置は、自動的に積分値を吐き出すようですから、アーチファクトを除外するプロセスは含まれていないと考えられます。

C それが、痴呆症特有の現象を示すものなのか
 単に、痴呆症を原因とした症状の一部を検出したものであるのか、あるいは、その現象そのものが、痴呆症の原因を端的に示しているのかは、対照実験等により検証する必要があります。

【著者の不運】

 検証が不十分であったとしても、この分野でストップしていれば、彼の勇み足は老人医療の世界のみで収まっていたのでしょうし、もしかしたら理由は不明のまま、「とりあえず痴呆症の疑いがある患者について選り分けられる」手法として有効に機能していたかもしれません。

 運が悪かったのは、たまたま正常の人間でも、彼の手法によれば「痴呆症と同じ」状態の脳波を見つけてしまった事でした。

 この時点で彼の研究成果は上記で示したCの観点で破綻しています。
 本来疑うべきだったのは「このパラメータは、痴呆症を判断するマーカーとして本当に適切だったのか」という事だったはずです(例え痴呆症患者の大部分を陽性と判断できても、非痴呆症患者の大部分も陽性と判断してしまうようでは、意味が無いわけですから)。

 しかし、著者は自分の研究成果を疑うという妥当な選択をせず、自分の研究成果が正しい前提の上で「痴呆症と同じ」状態の脳波を出す人は、一見正常人でも問題があるはず」と考えます。

 これもまた危険な考え方で、同じく上記Cの観点によれば、仮にその状態が痴呆症の患者に現れる事が多いとしても、それが痴呆症の症状全体を包括する根本的な原因なのか、あるいは他の原因によって引き起こされている従属的な現象なのかは判断できていないはずです。

 しかし、もうすでに彼の中では「その脳波を出す人は痴呆症と同じ症状が出る」という単なる仮説に、真実としての価値を持たせてしまいます。
 そして、彼は「痴呆症は脳波で区別できる」という仮説の時と同様に、その仮説を支持する事“だけ”を必死に探し出そうとします。

 現在ゲームを好きで無い若者の方が探すのが難しいぐらいですから、サンプルは選り取りみどりなわけですね。
 とりあえずデータを取って、「ゲーム脳」の状態が取れたらそれは裏付けのデータになり、被検査者の身上から、痴呆症のネガティブな症状と共通点を探すのでしょう。

 もし、「ゲーム脳」の状態が取れなかったら、それは被検査者のゲーム歴の問題や、ゲームの内容の問題にしてしまいます。しかも、ゲームの内容の問題にした場合、「これは体を動かした効果だ」とか、「これは非常にストレスがかかった状態で体に良くない」とか、憶測で批判するのを忘れません。
 一方、ゲーム以外のおそらく筆者が好意的に思う行為時の脳波に「ゲーム脳」と同じ状態が見られる場合、「確かに部分的には同じだが、これこれこういうわけでこの行為は有効だ」と言い繕います。

 果たして、このようなやり方は妥当か?と言えば答えはモチロンNOですね。

【こじつけ解釈の無理】

 彼は恐るべきデータを示します。
・ ゲーム脳人間タイプの中で、80%の人がよくキレやすいと答える。
・ 彼ら(ゲーム脳人間タイプ)のうち、90%は現在運動をしている。

 著者は、ゲーム脳の人間はキレやすいが、それが80%に“抑えられている”のは運動しているせいだと述べます。

 しかし、このデータを素直に受け取れば
・ ゲーム脳人間は、運動している人がほとんどを占める
・ 運動している人の多くがキレやすい
 という、ゲーム脳の論調とは全く逆のデータにしか読めません。

 そんなデータに違和感を持たず、堂々と紹介するところが、「スポーツは良い、ゲームは悪い」というバイアスがかかりっぱなしでデータを見ている証拠と言えます。
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